PLATEAU(プラトー)とは、国土交通省が2020年度から進めている、日本の都市の3Dモデルを整備し、オープンデータとして公開するプロジェクトです。建物の形と高さだけでなく、用途や階数といった「意味」の情報まで入っていて、出典を書けば商用でも無料で使えます。
データの整備は全国で進み、2025年度末時点で329都市の3D都市モデルが整備されています(国土交通省 報道発表資料)。一方で、そのデータを住民や来訪者が「見て、わかる」形にした例は、まだ多くありません。国土交通省のサイトには行政の分析やシステム開発の活用事例が数多く載っていますが、映像・インスタレーション・Webの体験として街を見せたい人に向けた情報は、ほとんど見当たらないのが現状です。
この記事では、Utsuboが大阪・道頓堀と東京・日本橋のPLATEAUデータで制作した3本の映像を例に、3D都市モデルで何が作れるか、データの実態、出典の書き方、補助制度、進め方までを、発注する側の目線で整理します。
対象読者: 自治体のまちづくり・観光・広報のご担当者、不動産デベロッパーの販売・広報担当、代理店・イベント制作会社のプロデューサーなど、3D都市モデルを使った映像・展示・Web体験を企画・発注する立場の方。
対象外: 都市計画の分析・シミュレーションや、GISシステムの開発そのものは扱いません。ブランドの店舗やショールームを3Dで再現する話は、ブランド向けデジタルツイン制作ガイドをご覧ください。
要点まとめ
- PLATEAUは、国土交通省が公開する全国の3D都市モデルです。建物の形・実測の高さに加えて、用途・階数・構造などの属性を持ち、出典を書けば商用利用も加工もできます(PLATEAUサイトポリシー)。
- 屋根の形まで再現された建物(LOD2)は、街の一部だけです。私たちが確かめた道頓堀周辺では、屋根の形を持つ建物は全体の18%で、外壁の写真(テクスチャ)は付いていませんでした。足りない見た目は、表現の工夫と他のオープンデータで補います。
- 高さは実測値なので正確です。道頓堀周辺でOpenStreetMap(OSM)と比べたところ、高さの登録がない建物の推定値は、実際の高さと中央値で11.6mずれていました。
- 映像・インスタレーション・Webのどれにも使えます。Googleの写実的な3D地図は、規約上データの抽出やオフラインでの利用ができないため、自社のソフトで描画して会場で動かす展示には向きません。
- 国土交通省の補助制度(都市空間情報デジタル基盤構築支援事業)は、データの整備だけでなく、整備とあわせて行うユースケース開発や住民説明の費用も対象です。令和8年度の早期実装タイプは補助率10/10・上限1,000万円です(国土交通省)。
- 発注するときは、範囲・見せたい数字・出力先(映像/リアルタイム/Web)・納品物・出典表記の5点を仕様書に書いておくと、手戻りが減ります。
1. PLATEAUとは:街を「意味のある3D」で配るオープンデータ
PLATEAUは、建物・道路・地形などを、3Dの形と属性情報つきでまとめた国土交通省の3D都市モデルです。データはCityGMLという国際標準の形式で整備され、都市ごとにG空間情報センターから無料でダウンロードできます。
1-1. データに入っているもの
建物のデータには、形のほかに次のような属性が入っています。
- 実測の高さと地上階数
- 用途(飲食店、小売店舗、事務所、共同住宅など)
- 構造(鉄筋コンクリート造、木造など)
- 所在する町丁目
都市によっては、道路・地形・土地利用・災害リスク(洪水浸水想定区域など)のデータも含まれます。建物の細かさは「LOD(Level of Detail)」という段階で表されます。
| LOD | 国の仕様での定義 | 映像で見たときの印象 |
|---|---|---|
| LOD0 | 建築物の形状を面で表現 | 地図上の輪郭 |
| LOD1 | 面を一律の高さで上向きに押し出した立体 | 高さの正確な箱が並ぶ街 |
| LOD2 | 屋根の形を含む立体 | 屋根の段差や屋上の塔屋まで見える |
| LOD3 | 外壁面や開口部(窓・ドア)まで詳細化 | 建物単体の見せ場になる。整備はごく一部 |
| LOD4 | 建築物の内側の形状(屋内空間) | 屋内まで見せたい建物向け。整備はごく一部 |
出典:国土交通省「3D都市モデル標準製品仕様書 第5.1版」
映像や展示で「街らしさ」を左右するのは、LOD1とLOD2の差です。LOD1だけの街は、高さの正確な白い箱が並ぶ姿になります。LOD2の建物には、屋根の段差や屋上の塔屋が加わります。
1-2. 形式とツール
PLATEAUには、データを扱うための公式ツールもそろっています。
- PLATEAU VIEW:ブラウザで3D都市モデルを表示できるビューアです。自分のエリアにどんなデータがあるかを確かめるのに使います。
- G空間情報センター:都市ごとのデータを配布しています。最新のデータは、CityGML・3D Tiles・MVTの3形式です。
- PLATEAU GIS Converter:CityGMLを、glTF・OBJ・3D Tiles・GeoJSONなど10種類以上の形式に変換するツールです。最新のデータはFBXやOBJでは配布されていないため、CGソフトで使うときはここで変換します。
- PLATEAU SDK for Unity/PLATEAU SDK for Unreal:ゲームエンジンに3D都市モデルを読み込むためのツールです。
GIS ConverterとUnity・Unreal向けのSDKは、国土交通省のサポートツールとして、オープンソース(MITライセンス)で公開されています。
Utsuboでは、CityGMLを自社のスクリプトで直接読み込んでいます。道頓堀周辺の範囲なら、読み込みは約35秒です。
2. 自社制作の3事例:PLATEAUで作った3本の映像
ここで紹介する3本は、Utsuboがインタラクティブ・インスタレーション用に開発している自社のリアルタイムツールのテストとして、SNS向けに制作した縦型の映像です。映像は画質を優先して1コマずつ書き出していますが、ツール自体は、展示の場でリアルタイムに動かすことを前提に開発しています。
2-1. 道頓堀に暮らす65,015人に、たこ焼きをひとつずつ(大阪)
道頓堀を中心にした1.6×2.8kmの範囲に、2020年の国勢調査で数えられた住民65,015人と同じ数のたこ焼きを降らせました。画面のカウンターは、降ったたこ焼きの数です。
見えてくるのは、にぎわいと「住んでいる人」のずれです。人通りの多い街区ほど住民は少なく、高島屋大阪店と南海なんば駅がある難波五丁目の住民は、国勢調査で1人でした。
- 使ったデータ:PLATEAUの建物(大阪市、2025年度)、国勢調査の小地域(町丁目)別人口、川の形はOSM
- こんな用途に:人口・来訪者数・税収などの統計を、地図の色分けではなく「量」として体感してもらう展示や広報。住民説明会、市政PR、SNS
建物:国土交通省 PLATEAU 3D都市モデル(大阪市、2025年度)を加工して作成。出典:国土交通省 PLATEAUウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/plateau/)/人口:総務省統計局「令和2年国勢調査」/地図データ © OpenStreetMap contributors
2-2. TOKYO KM 0:日本橋の道路元標から、東京を塗る(東京)
日本橋にある「日本国道路元標」は、国道1号・4号など7つの国道の起点です。そこから広がる波が、白い東京を細かな模様で塗っていきます。波が届くと東京タワーとスカイツリーに色がつき、最後は空のある一点からだけ読める文字(アナモルフォーシス)で終わります。
- 使ったデータ:PLATEAUの建物(東京都23区、2025年度)、道路・国道・水面はOSMとOverture Maps、土地被覆はESA WorldCover
- こんな用途に:ランドマークや起点を物語にしたシティプロモーション。見る位置によって意味が変わる演出は、来場者の立ち位置に合わせたインスタレーションにも応用できます
建物:国土交通省 PLATEAU 3D都市モデル(東京都23区、2025年度)を加工して作成。出典:国土交通省 PLATEAUウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/plateau/)/道路・水面:© OpenStreetMap contributors, Overture Maps Foundation/土地被覆:© ESA WorldCover project 2021, via Overture Maps Foundation(CC BY 4.0)
2-3. 道頓堀のビルが「中身」をまとう(大阪)
道頓堀周辺のビルの外壁に、そのビルに実際に入っている店や施設の種類を、階ごとに文字で貼りました。「焼肉」と書いてあるビルには、本当に焼肉店が入っています。降ってきた球がビルに当たると白い波が広がり、文字が落ちていきます。最後に映るのは、Utsuboのオフィスが入るビルです。
PLATEAUの建物用途に、Overture Mapsの店舗・施設データ(恵比須橋周辺で約9,300件)を重ねています。恵比須橋周辺の約1,600棟と照らし合わせると、約4分の3の建物で入居する店や施設が見つかり、約500棟は何階に入っているかまでわかりました。残りの建物には、PLATEAUの用途(飲食店、事務所など)を使っています。
- 使ったデータ:PLATEAUの建物と用途(大阪市、2025年度)、Overture Mapsの店舗・施設、道路と川はOSMとOverture Maps
- こんな用途に:商店街・エリアマネジメントの紹介、観光案内、テナント誘致、デベロッパーによる周辺環境の紹介
建物:国土交通省 PLATEAU 3D都市モデル(大阪市、2025年度)を加工して作成。出典:国土交通省 PLATEAUウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/plateau/)/店舗・施設:Overture Maps Foundation(overturemaps.org、2026年10月14日取得)/道路・水面:© OpenStreetMap contributors, Overture Maps Foundation
3. PLATEAUで作れる体験:出力先ごとの使い道
PLATEAUのデータは、書き出した映像、会場で動くインスタレーション、ブラウザで動くWebの、どの形でも使えます。違いは、誰が・どこで・どれだけ自由に動かして見るかです。
| 使い道 | 向いている出力先 | 主に見る人 | 事例 |
|---|---|---|---|
| シティプロモーション・観光 | SNS映像、サイネージ、ゲーム | 市民、観光客 | 本記事の3事例、中央区の日本橋川水辺空間の整備イメージ動画、さいたま新都心をFortnite上に再構築 |
| 統計の見える化 | 映像、展示 | 市民、来場者 | 国勢調査の人口を「量」で見せる(2-1) |
| 防災 | 映像、Web、展示 | 住民 | 災害リスクの3D可視化、江戸川区の高潮浸水リスクの3D表示 |
| まちづくり・合意形成 | 都市模型へのプロジェクション、XR、Web | 住民説明会の参加者 | 八王子市のXRを使った市民参加、倉敷市・京都市の景観まちづくり支援ツール |
| エリア・物件の紹介 | Web、販売センターの展示 | 購入検討者、テナント候補 | 入居する店舗を建物に重ねる(2-3) |
| イベント・展示 | リアルタイムのインスタレーション | 来場者 | 来場者の動きに合わせて街の色が変わる、など(本記事の映像は、そのためのツールのテスト) |
出力先を選ぶときは、次の比較が目安になります。
| 書き出し映像 | リアルタイム(インスタレーション) | Web | |
|---|---|---|---|
| 見え方 | 画質を最優先。カメラワークは固定 | 来場者の動きや操作に反応する | 見る人が自分で動かせる |
| 会場で必要なもの | 再生できる機材だけ | PC、センサー、プロジェクターやLED | なし(見る人の端末しだい) |
| 扱えるデータ量 | 制約はほぼない | 会場のPCの性能しだい | 範囲とLODを絞った軽量化が必須 |
| 向いている用途 | SNS、PV、サイネージ | 展示、イベント、ショールーム | 特設サイト、物件・エリア紹介 |
プロジェクションマッピングとインスタレーションの違いは、インスタレーションとプロジェクションマッピングの比較ガイドで詳しく整理しています。デベロッパーの販売サイトで3Dをどう使うかは、不動産デベロッパー向けWebサイトガイドにまとめています。自治体の観光施策全体の中での位置づけは、自治体・観光DMOのための観光DX実践ガイドをご覧ください。
4. データの実態:使う前に知っておきたい5つのこと
PLATEAUは高さと用途の情報が正確な一方で、屋根の形、外壁の写真、川や樹木といった「見た目」の情報は、エリアによって欠けています。以下は、2026年10月に道頓堀周辺(恵比須橋のまわり)のデータを実際に読み込んで確かめた結果です。
4-1. 屋根まであるLOD2は、街の一部だけ
今回の範囲(道頓堀周辺)で屋根の形を持つLOD2の建物は、全体の18%でした。LOD2があるのは四つ橋筋から堺筋あたりまでの、幅およそ870mの帯だけでした。その外側は、高さの正確な箱です。
自分のエリアにLOD2があるかは、PLATEAU VIEWで表示すると確かめられます。企画の前に見ておくと、カメラをどこに置けるかの見当がつきます。
4-2. 外壁の写真(テクスチャ)は、ほとんどない
大阪市のデータでは、建物ファイル270区画のうち外壁の写真が付いているのは24区画で、ミナミには1区画もありませんでした。写真が付いている区画でも、元は航空写真なので解像度は低く、影も焼き込まれています。
そのため、Utsuboの3本は、どれも写真のリアルさを狙っていません。白い模型、文字、色、降ってくる粒といった表現で、欠けている見た目を置き換えています。「足りないデータを、表現で補う」のが、PLATEAUで映像を作るときの基本の考え方です。写真のような質感がどうしても必要な場所だけ、別途撮影して3D化する方法もあります(3Dキャプチャ手法の比較ガイド)。
4-3. 川・橋・樹木は、別のデータで補う
道頓堀周辺のPLATEAUデータには、道頓堀川の水面、橋、街路樹、ストリートファニチャーが入っていませんでした。私たちの映像では、川の形をOpenStreetMapから、道路をOverture Mapsから取って補っています。データを足すと、そのぶん出典表記も増えます(第6章)。
4-4. 「不明」は数字で入っている
属性が調べられていない建物には、空欄ではなく決まった数字が入っています。道頓堀周辺のファイル(24,907棟)では、次のとおりでした。
| 属性 | 「不明」を表す値 | 該当した棟数 |
|---|---|---|
| 高さ | -9999 | 1,388棟 |
| 地上階数 | 9999 | 3,911棟 |
| 用途 | 461(不明) | 3,774棟 |
これを読み飛ばさずにそのまま使うと、建物の高さに「-9999m」と表示されたり、建物が地面の下へ伸びたりします。制作会社に依頼するときは、こうした値をどう扱うかを確認しておくと安心です。
4-5. 高さは正確。カメラ位置は、データを入れてから決める
同じ範囲で、PLATEAUとOpenStreetMap(OSM)の建物を1棟ずつ比べました。
| 項目 | PLATEAU | OpenStreetMap |
|---|---|---|
| 建物の輪郭 | あり | あり(OSMの建物面積の93%がPLATEAUと重なる) |
| 高さ | 実測値(一部「不明」) | 登録があるのは4,488棟。残る5,815棟は推定が必要 |
| 推定した高さの誤差 | (実測のため推定不要) | 中央値11.6m。78%の建物で5m以上ずれた |
| 屋根の形 | 建物の18% | 範囲全体で24棟 |
| 用途・階数 | あり | 一部のみ |
| ライセンス | PDL1.0(CC BY 4.0互換) | ODbL |
OSMに高さが登録されている建物は、PLATEAUの実測値とよく一致していました。差が出るのは、登録がない半分以上の建物です。
高さが正確になると、絵も変わります。たこ焼きの映像では、建物をOSMの推定からPLATEAUに差し替えたところ、推定より高かったビルが通りのカメラの手前に立ちはだかり、カメラの出発点を70m前に動かしました。絵コンテは、実際のデータを入れてから確定するのが安全です。
5. Googleの3D地図との違い:書き出しとオフライン利用
自社のソフトで描画する映像や展示には、PLATEAUのようなオープンデータを使うのが基本です。Googleの写実的な3D地図(Photorealistic 3D Tiles)は見た目こそリアルですが、規約でデータの抽出や保存、オフラインでの利用が認められていません。
Map Tiles APIのポリシーは、タイルからのデータ抽出(Geodata extraction)とオフライン利用(Offline uses)を禁じています。Google Maps Platformの利用規約にも、スクレイピングとキャッシュの禁止があります(3.2.3)。
| PLATEAU | Googleの写実的な3D地図 | |
|---|---|---|
| 見た目 | 白い模型が基本(写真は一部のみ) | 写真のようにリアル |
| 建物ごとの属性(用途・高さ・階数) | あり | なし(街全体がひとつの表面) |
| データの書き出し・加工 | 可(出典を表記) | 不可 |
| 会場でのオフライン利用 | 可 | 不可 |
| 物理演算や独自の表現 | 可 | Googleのサービス上で表示する範囲に限られる |
インスタレーションは、会場のネットワークに頼らずオフラインで動かすのが一般的です。データを手元に置いて、自由に加工できるPLATEAUのほうが、展示や映像の素材に向いています。
6. 出典表記と権利
PLATEAUのデータは、出典を書けば商用利用も加工も自由にできます。表記と権利について押さえておきたいのは、次の4点です。
- ライセンス:PLATEAUサイトポリシーにより、公共データ利用規約(第1.0版)に従って使えます。クリエイティブ・コモンズの表示4.0国際(CC BY 4.0)と互換性があり、G空間情報センターのデータセットページにも「商用利用も含め、どなたでも無償で自由にご利用いただけます」とあります(大阪市 2025年度の例)。
- 出典の表記:「出典:国土交通省 PLATEAUウェブサイト(当該ページのURL)」と書きます。
- 加工したとき:出典とは別に、編集・加工したことを書きます(「〇〇を加工して作成」)。加工したものを、国土交通省が作ったかのように見せてはいけません。
- 著作権:G空間情報センターで公開されている3D都市モデルの著作権は、各地方公共団体にあります。
加工したときの表記例(Utsuboの映像で使っているもの):
建物:国土交通省 PLATEAU 3D都市モデル(大阪市、2025年度)を加工して作成。出典:国土交通省 PLATEAUウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/plateau/)
ほかのデータを組み合わせたときは、それぞれの出典も並べます。
| データ | 表記の例 |
|---|---|
| OpenStreetMap(ODbL) | © OpenStreetMap contributors |
| Overture Maps | Overture Maps Foundation, overturemaps.org(データの提供元ごとにライセンスが異なります。たとえばFoursquare由来の店舗データはApache 2.0で、著作権表示の保持が必要です。Overtureの表記ガイド) |
| 国勢調査 | 総務省統計局「令和2年国勢調査」(e-Stat) |
出典を書く場所は、出力先に合わせて決めます。SNSなら投稿の本文、映像ならエンドクレジット、展示なら会場のキャプションや掲示、Webならページ内やフッターです。実在の店名やロゴを画面に出す場合は、データのライセンスとは別に確認が必要です。道頓堀の映像では、店名ではなく「焼肉」「居酒屋」といった業種を表示しています。
7. 補助制度:都市空間情報デジタル基盤構築支援事業
自治体が3D都市モデルを整備・更新し、それを使ったユースケースを開発する事業には、国土交通省の補助制度「都市空間情報デジタル基盤構築支援事業」があります。対象経費には、データを使った分析・シミュレーション・アプリ開発等の費用や、住民説明等の費用も含まれます(国土交通省「地方公共団体向け説明資料」(令和8年度))。
| タイプ(令和8年度) | 補助率 | 上限 | 主な条件 |
|---|---|---|---|
| 通常タイプ | 1/2 | なし | |
| 早期実装タイプ(単独型) | 10/10 | 1,000万円 | 事業計画の初年度の事業であること |
| 早期実装タイプ(連携型)※令和8年度拡充 | 10/10 | 1,000万円×整備・更新を行う自治体の数 | 隣接する複数の自治体が共同で1つの事業計画を策定すること |
| 事前復興タイプ ※令和8年度創設 | 10/10 | 2,000万円 | 適用期間は上限3年 |
| 間接補助 | 自治体が事業者に補助する費用の1/2以内、または事業費の1/3以内のいずれか低い額 | なし | 自治体が民間事業者に補助する場合 |
発注する側が押さえておきたいのは、次の3点です。
- 申請できるのは地方公共団体です(広域連合・一部事務組合を含む)。民間企業が関わる場合は、自治体からの間接補助を受けるか、民間企業が直接申請できる「民間サービス実装タイプ」(補助率1/2以内・上限5,000万円、公募資料)を使います。
- ユースケースがあることが要件です。原則として、同じ年度のうちに3D都市モデルの整備とユースケース開発を行います。整備したデータはCityGMLで作り、オープンデータとして公開します。
- スケジュールは年度単位です。国土交通省の資料にある実施スケジュールの例では、4〜5月に実施計画書を出し、12月までにデータを納品し、2月までにG空間情報センターで公開します。映像や展示をユースケースとして事業に入れるなら、予算要求の段階で企画を固めておく必要があります。
制度の内容は年度ごとに見直されます。申請の前には、国土交通省のページで最新の要件を確認してください。
インスタレーションやデジタル展示に使えるその他の補助金・助成金は、インタラクティブ・インスタレーション導入の補助金・助成金ガイドでまとめています。
8. 進め方:PLATEAUを使った映像・展示の6ステップ
PLATEAUを使った映像や展示は、データを確かめてから表現を決める順番で進めると、手戻りが少なくなります。
- 見せる相手と目的を決める。住民への説明、観光PR、物件の販売、イベントの集客など、誰に何を感じてほしいかを一文にします。
- 範囲と「数字」を決める。どのエリアを、どのデータで見せるかを決めます。国勢調査の人口、来訪者数、浸水想定など、街に重ねる数字があると、ただの3D地図ではなく伝わる映像になります。
- 自分のエリアのデータを確かめる。PLATEAU VIEWで、LOD2の範囲、外壁の写真の有無、用途などの属性を確認します(第4章)。
- 表現を決めて、静止画で確かめる。白い模型、色分け、文字、粒子など、欠けている見た目を補う表現を選び、映像にする前に数カットの静止画で確認します。
- 制作し、会場の条件で検証する。映像なら書き出し、展示ならリアルタイムで実装し、実際の機材と会場の明るさで確かめます。
- 出典を表記して公開する。出力先に合わせて、出典の場所と文面を決めます(第6章)。
参考までに、本記事の3本のようなSNS向けの20〜30秒のテスト映像は、Utsuboではデータの取得から書き出しまで1本あたり1〜2日で試作しています。依頼を受けて制作する場合は、ここに企画、確認、会場での検証の時間が加わります。
8-1. 仕様書に書いておきたい項目
| 項目 | 書いておく内容の例 |
|---|---|
| 範囲 | 〇〇駅を中心に2km四方、など |
| 使うデータと年度 | PLATEAU(〇〇市、2025年度)、国勢調査(2020年)など |
| 見せたい数字・メッセージ | 「この地区に暮らす人の数」「浸水したときの水の高さ」など |
| 出力先と画面の比率 | SNS向け縦型20秒、会場LEDの横長、Webなど |
| 納品物 | 映像ファイル、静止画、リアルタイムのアプリ、3Dデータそのものの扱い |
| 出典表記 | 誰が文面を用意し、どこに表示するか |
| データ更新時の扱い | 新しい年度のデータが公開されたとき、差し替えるかどうか |
9. まとめ
PLATEAUは、全国の街を正確な高さと「意味」つきで、無料で使える3Dデータです。ただし、屋根の形や外壁の写真はエリアによって欠けているため、写真のようなリアルさよりも、白い模型・色・文字・粒子といった表現で街を見せるほうが、データの強みが生きます。データを確かめ、見せたい数字を決め、出力先に合った形で作る。この順番を押さえれば、3D都市モデルは「整備したデータ」から、住民や来訪者が見て、わかる体験に変わります。
10. Utsuboについて
Utsuboは、大阪(中央区)を拠点とするインタラクティブ体験のクリエイティブスタジオです(2021年創業)。インスタレーションやデジタル展示、WebGL・Three.jsを使ったWebを、企画からソフトウェアの実装まで自社のエンジニアリングで手がけています。インタラクティブ・インスタレーション用のリアルタイムツールも自社で開発しており、本記事の映像はそのテストとして制作したものです。
主な制作実績
- JR西日本本社のリニューアルで制作したデジタルインスタレーション(社員から集めたメッセージをリアルタイムで3Dの建物に変換し、ひとつの都市として可視化)
- 中小機構の体験型インスタレーション
- 大阪・関西万博2025のヘルスケアパビリオンで7日間展示した自社作品「Waves of Connection」(来場者1万人以上)
大阪拠点で全国の案件に対応しています。打ち合わせはオンライン中心で、現地調査や設営には日程を合わせて伺います。
11. ご相談ください
自分の街の3D都市モデルを、映像や展示、Webで見せることを検討していますか?私たちは、自治体・デベロッパー・代理店のチームと、リアルタイム3D、データを使った映像、インスタレーションの領域で協業しています。
PLATEAUを使った企画について、お話ししましょう:
- 見せたい相手、エリア、使いたいデータ
- その条件で成立する表現と、映像・展示・Webのどれが合うか
- 私たちが制作パートナーとして適しているかどうか
チェックリスト:PLATEAUを使った映像・展示を発注する前に
- 見せる相手と目的を、一文で書けた
- 範囲(エリア)と、街に重ねる数字・データを決めた
- PLATEAU VIEWで、そのエリアのLOD2の範囲と外壁の写真の有無を確認した
- 出力先(映像/リアルタイムの展示/Web)と画面の比率を決めた
- PLATEAUにないデータ(川、樹木、店舗など)を、どのデータで補うか決めた
- 使うすべてのデータについて、出典の文面と表示する場所を決めた
- 実在の店名やロゴを出すかどうかを決めた
- 納品物(映像、静止画、アプリ、3Dデータ)と、データ更新時の扱いを仕様書に書いた
- 補助制度を使う場合は、申請の主体と時期を確認した
よくある質問
Q. PLATEAUのデータは、商用の映像や展示に使えますか? A. 使えます。PLATEAUのデータは公共データ利用規約(第1.0版)に従って公開されていて、CC BY 4.0と互換性があり、商用利用も加工もできます。条件は、「出典:国土交通省 PLATEAUウェブサイト(当該ページのURL)」という出典の表記と、加工した場合はそのことを書くことです。加工したものを、国土交通省が作ったかのように見せることはできません。
Q. 自分の街のデータがあるかは、どこで確かめられますか? A. PLATEAU VIEWで地図を動かすと、整備済みのエリアと建物の細かさ(LOD)を確かめられます。データはG空間情報センターから都市ごとにダウンロードできます。2025年度末時点で、329都市の3D都市モデルが整備されています。
Q. LOD2のないエリアでも、見栄えのする映像は作れますか? A. 作れます。LOD1の建物でも高さは実測値なので、街のスカイラインは正確です。屋根の形や外壁の写真がない分は、白い模型、色分け、文字、粒子などの表現で補います。本記事の3本の映像も、写真のリアルさではなく表現で街を見せています。
Q. Googleの3D地図ではなく、PLATEAUを使うのはなぜですか? A. 自社のソフトで描画する映像や展示では、データを手元に置いて加工する必要があるためです。Googleの写実的な3D地図(Photorealistic 3D Tiles)は、Map Tiles APIのポリシーでデータの抽出やオフラインでの利用が認められていません。PLATEAUなら、出典を書けばデータを書き出して加工でき、会場のオフライン環境でも使えます。
Q. PLATEAUを使った映像や展示に、補助金は使えますか? A. 自治体の事業であれば、国土交通省の「都市空間情報デジタル基盤構築支援事業」が使える場合があります。3D都市モデルの整備とあわせて行うユースケース開発や住民説明の費用も対象で、令和8年度の早期実装タイプは補助率10/10・上限1,000万円です。申請できるのは地方公共団体で、民間企業が直接申請できる枠として民間サービス実装タイプ(補助率1/2以内・上限5,000万円)もあります。最新の要件は、国土交通省のページで確認してください。
Q. 統計やほかのデータと組み合わせられますか? A. 組み合わせられます。PLATEAUの建物には町丁目の情報が入っているため、国勢調査の町丁別人口のような統計と結びつけやすいのが利点です。本記事では、国勢調査の人口(たこ焼きの映像)や、Overture Mapsの店舗・施設データ(道頓堀のビルの映像)を重ねています。組み合わせたデータの出典も、あわせて表記します。
Q. 映像だけでなく、展示やWebにも使えますか? A. 使えます。書き出した映像はSNSやサイネージに、リアルタイムのインスタレーションは来場者の動きに反応する展示に、ブラウザで動く3DはWebに向いています。Webでは表示が重くならないよう、範囲と建物の細かさを絞って軽量化します。

インタラクティブコンテンツ・体験型コンテンツ制作


