マンションギャラリーの映像演出は、まだ建っていない建物について、図面では伝わらない5つのこと(眺望、周辺環境、検討しているプランの広さ、共用部の雰囲気、物件全体の価値)を来場者に見せるための仕組みです。模型へのプロジェクションマッピング、投影シアター、LED空間、VR・XR、来場者が操作できるインタラクティブ模型、床や壁のインタラクティブ投影などの手法があり、得意なことはそれぞれ違います。
本記事では、公表されている国内のギャラリー事例12件を整理したうえで、課題ごとの手法の選び方、「見せる」から「操作できる」への変化、子ども連れのご家族に向けた体験、不動産の表示に関する公正競争規約(表示規約)で映像に関わる条文、仮囲いから完売後までの使い方、効果の測り方を解説します。
この記事の対象読者: 新築分譲マンションの販売企画・マーケティングのご担当者、販売代理会社・広告代理店でギャラリーの企画を担当するプランナーの方、模型会社・ディスプレイ会社で映像と仕掛けの制作パートナーを探している方。
要点まとめ
- 市場: 首都圏の2026年度上半期は、平均価格が年度上半期として初めて1億円を超え(1億1,494万円)、初月契約率は62.8%で、70%を下回るのは3年連続です。近畿圏も69.3%で、4年ぶりに70%を割りました。高額な住戸を、予約制の接客で1組ずつ納得してもらう販売になっています。
- 手法の選び方: 眺望ならLEDか投影、立地と周辺なら模型へのプロジェクションマッピング、検討中のプランの広さなら床と壁の実寸表示、共用部ならLED空間かXRが向いています。子ども連れのご家族には、子どもの動きに反応する床や壁の投影が向いています。ひとつの手法ですべてを伝えようとしないことが大切です。
- 変化: 国内の事例の多くは、決まった映像を上映する「シアター」です。来場者が住戸・季節・時刻を選ぶと模型と映像が切り替わるインタラクティブな模型にすると、知りたいことにその場で答えられ、操作の記録も残ります。
- ルール: 表示規約では、映写・電光による広告もモデルルームも「表示」に含まれます。CGや完成予想図はその旨を明示し、眺望や日照を実際より良く見せてはいけません。
- 効果: 映像演出が成約率をどれだけ上げたかを公表した事例は、国内外ともに見つかりませんでした。来場予約から申込までの指標を、最初に決めておくことをおすすめします。
- 導入前の確認: ギャラリーの部屋を3Dで計測し、模型へのサンプル演出がどう見えるかを、設置の前にプレビュー映像で確かめられます。大阪・京都・神戸・東京のギャラリーは、現地での計測込みで14万円(税別)です。
1. マンションギャラリーの映像演出が担う5つの役割
マンションギャラリーの映像演出の役割は、まだない建物について、図面とパンフレットでは伝わらないことを来場者に体感してもらうことです。デベロッパーや制作会社の発表を読むと、映像を導入した理由は次の5つに集約されます。
| 伝えたいこと | 図面だけでは伝わらない理由 | 公表されている例 |
|---|---|---|
| 眺望 | 建物がない、または完成していても販売中の来場者を住戸に案内できない | HARUMI FLAG:「建物はできているのに、その眺望をお客様にご覧いただけないというジレンマ」(パナソニック導入事例) |
| 立地・周辺環境 | 駅、公園、商業施設との位置関係は、地図では実感しにくい | ザ・パークハウス 中之島タワー:第1シアターで、横幅5.2mのジオラマ模型への投影で立地を訴求(キャドセンター) |
| 検討しているプランの広さ | モデルルームは1〜2タイプしか作れず、来場者のプランとは違う | ギャラリークレヴィア:来場者から「検討しているプランではないので想像がしにくい」という声があり、全プランを実寸で表示(伊藤忠都市開発) |
| 共用部・外観の雰囲気 | エントランスやラウンジの天井高、素材、光は図面とパースでは伝わらない | 高輪ゲートウェイのギャラリー:エントランスなどをほぼ等身大のCGで3面に投影(ソニー) |
| 物件全体の価値・物語 | 大規模開発やブランドの考え方は、仕様の一覧では伝わらない | ザ・パークハウス 中之島タワー:第3シアターで、1/50の物件模型への投影と模型内の照明・天井のLEDを連動 |
長谷工グループのメディアの取材記事で、ギャラリーの企画を手がける環境計画研究所の社長は「XRに適した部分と、LEDビジョンのように肉眼で見るのに向く部分があるので、それぞれを無理に混ぜるのではなく、適切に使い分けることが大事だと考えています」と話しています(マンションプラス、2026年4月)。次の章で、この使い分けを課題ごとに整理します。
1-1. なぜ今、ギャラリーの演出が見直されているのか
理由は2つあります。ひとつは、売り方の変化です。首都圏の新築マンションは、2026年度上半期(4〜9月)に8,601戸が発売され、平均価格は1億1,494万円と、年度上半期として初めて1億円を超えました。初月契約率は62.8%で、70%を下回るのは3年連続です。近畿圏は6,557戸、平均6,010万円で、契約率は69.3%と4年ぶりに70%を割りました(不動産経済研究所・首都圏、近畿圏)。高額な住戸を、予約制の接客で1組ずつ納得してもらう販売では、検討中の住戸に合わせて答えられる道具が求められます。
もうひとつは、ギャラリーの集約です。物件ごとに仮設のモデルルームを建てて壊すのではなく、複数の物件を1か所で扱うギャラリーが増えています。野村不動産のプラウドギャラリー芝浦は、2027年までに累計10物件以上を扱う予定です(野村不動産)。タカラレーベンも、販売拠点を集約することで物件ごとにモデルルームを作る必要がなくなり、コストを削減できると説明しています(タカラレーベン)。集約型のギャラリーでは、映像は物件が変わるたびに差し替えるものになります。
2. 手法の使い分け:模型プロジェクションマッピング・投影シアター・LED・VR・インタラクティブ模型
伝えたいことが決まれば、手法はほぼ決まります。模型へのプロジェクションマッピングは立地と建物の全体像、LED空間は等身大の空間と眺望、VR・XRは1人ずつの没入、インタラクティブ模型は来場者ごとの疑問に答えること、床や壁のインタラクティブ投影は子どもが遊べる居場所をつくることが得意です。
| 手法 | 得意なこと | 同時に見られる人数 | 来場者の操作 | 設計変更・次の物件への差し替え | 空間の条件 |
|---|---|---|---|---|---|
| 模型へのプロジェクションマッピング | 立地、周辺環境、建物の全体像、日照の変化 | 数人〜十数人 | 基本は上映のみ | 映像の作り直しが必要(リアルタイム制作なら差し替えやすい) | 天井からの投影、照明を落とせること、白くマットな模型 |
| 投影シアター(壁・スクリーン) | 物件の物語、空撮、眺望 | 十数人 | なし | 映像の作り直し | 投影距離を取れる部屋、または超短焦点プロジェクター |
| LED空間(壁・床) | 等身大の間取り、眺望、共用部 | 数人〜十数人 | タブレットでの切り替えが多い | プランや映像の差し替えで対応しやすい | 壁と床の面積、明るい部屋でも使える |
| VR・XR(ヘッドセット、ドーム) | 共用部や住戸の中を歩く、天井高、昼夜の違い | 1人ずつ(ドーム型は複数人) | 視点を自由に動かせる | 3Dデータの更新 | 着脱と案内を担当するスタッフ |
| インタラクティブ模型 | 住戸を選んで、その住戸の位置、眺望、日当たりを見せる | 数人 | 来場者や営業担当が操作 | 3Dデータを差し替えればよい | 模型、投影、操作用の端末、ソフトウェア |
| 床・壁のインタラクティブ投影 | 子どもが体を動かして遊べる、商談中の子どもの居場所になる | 数人 | 体の動きに反応 | コンテンツの差し替えで季節や物件に合わせられる | 床・壁の投影面、天井からの投影、商談席から見える位置 |
組み合わせの例: 中之島の事例は、ジオラマへの投影(立地)、4Kシアター(外観と共用施設)、物件模型への投影(物件の価値)と、伝えたいことごとに部屋を分けています。プラウドギャラリー新宿は、プラウドのこれまでの取り組みを紹介する本型のプロジェクションマッピング、VR模型、3面スクリーンへの投影で間取りの可変性を体感する展示、タッチモニターを、「LABO ZONE」のコーナーとして設けています(野村不動産)。
ヘッドセットについて: VRは、来場者全員に使ってもらうものではありません。着脱と案内を担当するスタッフを置けない場合は、ドーム型やLED空間のように、ヘッドセットなしで複数人が同時に見られる方法が向いています。Web上の3D内覧については、不動産デベロッパー向けWebサイトガイドで整理しています。
3. 国内のマンションギャラリー事例12
公表されている国内の事例を、手法と来場者の操作の有無で整理しました。どの事例も、成約への効果の数値は公表されていません。
| # | ギャラリー・物件(事業者) | 時期 | 手法 | 来場者の操作 | 制作・機材(公表分) |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | ザ・パークハウス 中之島タワー(三菱地所レジデンス、住友商事、京阪電鉄不動産、アサヒプロパティズ) | 2023年頃(推定) | ジオラマ・1/50模型へのPM、4Kシアター、天井LED | なし | キャドセンター(代理店:読売広告社) |
| 2 | HARUMI FLAG パビリオン(三井不動産レジデンシャルほか) | 2019年3月 | 実際の眺望のタイムラプス投影、ドーム型VR | — | パナソニック |
| 3 | プラウドギャラリー新宿(野村不動産) | 2023年2月 | PM、VR模型、3面投影の間取り可変展示 | タッチモニター | — |
| 4 | プラウドギャラリー芝浦(野村不動産) | 2026年2月発表 | 3面LED、4面LEDのラウンジ、Apple Vision Proでのイマーシブ体験 | XRで歩ける | スタイルポート、環境計画研究所と共同開発 |
| 5 | 高輪ゲートウェイ マンションギャラリー(三菱地所レジデンス) | 2020年3月 | 4K超短焦点プロジェクターで3面シームレス投影 | — | ソニー |
| 6 | ギャラリークレヴィア有楽町イトシア(伊藤忠都市開発、現・JR東日本伊藤忠不動産開発) | 2024年3月 | 壁3面と床のLEDで全プランを実寸表示、VR | タブレットで間取りを動かす | — |
| 7 | レーベンサロン秋葉原(タカラレーベン) | 2024年10月 | 約8mのLEDを壁と床に、VR内覧 | — | — |
| 8 | プラウドタワー小岩ファースト(野村不動産ほか) | 2021年5月 | 7,000ルーメンのプロジェクター6台で壁3面と床に投影 | タブレット操作 | シミュニティ |
| 9 | 日鉄興和不動産のギャラリー(上野) | 2021年 | 床と壁2面のLEDで、約23㎡のLDを等身大表示、窓の眺望を再現 | — | — |
| 10 | 東急不動産のギャラリー(大阪・本町) | 2021年 | 実際の営業担当者が映り込むXRヘッドセット | XRで体験 | — |
| 11 | WILLROSE THE GALLERY TOKYO(THE グローバル社) | 2025年3月 | シアタールーム、VR(集約型) | — | — |
| 12 | 小型模型へのPM(24stream「箱部屋」、ハイウェル) | 2015〜2016年 | 小さな住戸模型に複数の内装パターンを投影 | iPadで切り替え(箱部屋) | 24stream、ハイウェル |
出典:1 キャドセンター/2 パナソニック/3 野村不動産/4 野村不動産/5 ソニー/6 伊藤忠都市開発/7 タカラレーベン/8 シミュニティ/9・10 ニュースイッチ(日刊工業新聞)/11 THE グローバル社/12 CGWORLD、ハイウェル
3-1. 事例から見える3つの傾向
- 模型への投影は「上映」が中心です。 中之島のように、模型・照明・LEDを連動させた完成度の高い演出はありますが、来場者が自分の住戸を選んで模型が答える仕組みは、公表された事例にはほとんど見当たりません。
- LED空間とXRが増えています。 今回整理した2024年以降の事例は、壁と床のLEDで実寸のプランを見せる方法と、Apple Vision Proなどのヘッドセットが中心です。明るい部屋でも使えること、プランの差し替えがしやすいことが理由と考えられます。
- 眺望は「実写」の価値が高まっています。 HARUMI FLAGは、実際の建物から定点撮影した眺望を、朝から夜へのタイムラプスとして4台のレーザープロジェクターで窓の外に再現し、照明も映像に合わせて変えています。完成予想のCGではなく、本物の眺望を見せられる場面では、それが最も説得力のある素材になります。
4. 「見せる」から「操作できる」へ:インタラクティブな模型
インタラクティブな模型とは、来場者や営業担当がタブレットや模型の周りで操作すると、模型への投影と周りの映像がその場で切り替わる展示です。上映型のシアターが全員に同じ物語を見せるのに対して、インタラクティブな模型は、目の前の来場者が知りたいことに答えます。
| 操作 | 模型と映像で起きること | 来場者が得られる答え |
|---|---|---|
| 住戸を選ぶ | 模型の上でその住戸の位置が光り、壁にその階・向きの眺望が映る | 「自分が検討している部屋は、どこで、何が見えるか」 |
| 季節と時刻を選ぶ | 太陽の位置を計算した光と影が、模型と周辺の建物に落ちる | 「冬の午後、この部屋に日が入るか」 |
| 周辺施設を選ぶ | 駅、学校、病院、スーパーまでの道が模型と周辺ジオラマに描かれる | 「駅まで、どの道を何分歩くか」 |
| 共用部を選ぶ | 模型の中の位置が光り、LEDやスクリーンにその空間が映る | 「ラウンジは何階のどこにあるか」 |
この仕組みには、上映型にはない利点が2つあります。
- 営業の会話が具体的になります。 「その住戸なら、冬はこの時間まで日が入ります」と、検討中の住戸に合わせて話を進められます。
- 操作の記録が残ります。 どの住戸、どの季節、どの施設が選ばれたかが記録され、来場者の関心を次の商談や、物件ごとの訴求の見直しに使えます。これは、決まった映像を流すだけの演出では得られない情報です。
4-1. リアルタイムで動かす理由
インタラクティブな模型は、あらかじめ書き出した映像ではなく、建物の3Dデータの上で映像をその場で計算する「リアルタイム」の仕組みで動かします。これには販売の現場ならではの利点があります。
- 設計変更に強い。 住戸のプランや外観が変わっても、3Dデータを更新すれば映像が追従します。書き出した映像は、作り直しになります。
- 次の物件に差し替えやすい。 集約型のギャラリーで物件が変わるときも、模型と3Dデータを差し替えれば、演出の仕組みはそのまま使えます。
- 表記を外せない。 「CG」「完成予想図」などの表記を、すべての画面にシステム側で常に表示できます(表示規約については6章で説明します)。
Utsuboは、御堂筋イルミネーション2026の北御堂で、来場者の動きに反応する約15分のプロジェクションマッピングのコンテンツとソフトウェアを制作しました。センサーが前庭を歩く人の位置をとらえ、効果はすべて寺院の3Dモデルの上で計算しています。少人数のチームで、開幕前の1か月に53回の更新を重ねました。建物の3Dデータの上で映像を計算し、現場の声に合わせて短いサイクルで直していく進め方は、設計変更が続く販売前のギャラリーにもそのまま当てはまります。詳しくは北御堂の制作事例をご覧ください。

4-2. 子ども連れのご家族へ:子どもが夢中になれる体験
ファミリー向けの物件では、子どもを預けられずに、家族そろって来場される方もいます。商談が長くなると子どもは退屈し、子どもが飽きてしまえば、商談はそこで終わってしまいます。床や壁の映像が子どもの動きに反応する体験を用意すれば、子どもには自分だけの楽しみができ、親は落ち着いて話を聞き、質問できます。
北御堂のプロジェクションマッピングには説明書きがありませんが、遊び方には、たいていは子どもたちが先に気づき、大人があとに続きます。
- 置く場所: 商談席から子どもの様子が見える位置に置くと、親も安心して話を続けられます。
- 安全: プロジェクターは天井に設置し、子どもが見上げても光が直接目に入りにくい角度にします。遊ぶ場所には段差やケーブルを出さず、滑りにくい床にします。
- プライバシー: 人の位置の検知には、カメラの映像を使わないLiDARなどのセンサーを選べます。カメラを使う場合も、映像を保存しない設計にします。
- 内容: 隣の公園の木々や街の四季など、物件の世界観とつなげると、ありきたりなゲームではなく、ブランドの体験の一部になります。
年齢に合わせた設計や安全の考え方は、こどもミュージアム向けインタラクティブ展示ガイドで解説しています。
5. 周辺環境は3D都市モデルから
周辺のジオラマや空撮の代わりに、国土交通省の3D都市モデル「PLATEAU」を使うと、周辺の建物の高さを実測にもとづいて再現できます。ただし、エリアによって建物の形や外壁の写真が欠けているため、写真のようなリアルさより、白い模型と光で見せる表現が向いています。データの範囲、制約、表記のルールは、PLATEAU活用ガイドで、私たちが制作した3本の映像とあわせて解説しています。
6. 表示規約:ギャラリーの映像で守るべきこと
ギャラリーの映像やプロジェクションマッピングも、不動産の表示に関する公正競争規約(表示規約)の「表示」に含まれます。規約は、表示の種類として「映写、演劇又は電光による広告」と「モデル・ルームその他これらに類似する物による表示」を挙げています(第4条第5項第4号・第5号)。映像の企画では、次の条文を確認してください。
| 条文 | 内容(要約) | 映像・演出で気をつけること |
|---|---|---|
| 規約 第5条 | 工事の完了前は、宅建業法第33条の許可等の処分(建物では建築確認など)の後でなければ、物件の内容や取引条件の広告表示をしてはならない | 仮囲いへの投影や先行のティザー映像で、物件の内容を見せるのは処分の後から |
| 施行規則 第9条第23号 | CG、見取図、完成図、完成予想図は、その旨を明示して使う。周囲の状況は現況に反する表示をしない | 画面の中に「CG」「完成予想図」と常に表示する。周辺の建物を消したり、ない公園を足したりしない |
| 施行規則 第9条第22号 | 他の建物の写真・動画は、同じ施工者の建物で条件を満たす場合に限り使え、その旨を明示する | 別物件の実写素材を流用するときは、他の建物である旨を画面に表示する |
| 規約 第23条第1項第38号 | 採光、通風、日照、眺望などを実際より優良と誤認させる表示をしてはならない | 日照のシミュレーションは、実際の方位・階・周辺建物から計算する |
| 規約 第23条第1項第42号 | モデルルーム、写真、動画、CG、完成予想図で、規模・形状・構造などを事実と違えて表示してはならない | 等身大のLEDや投影で見せる寸法は、図面と一致させる |
| 規約 第23条第1項第43号 | 物件からの眺望・景観を示す写真、動画、CGで、事実と違う、または実際より優良と誤認させる表示をしてはならない | 眺望映像は、その住戸の階と方角から撮影または算出し、遮る建物も映す |
違反が認められると、公正取引協議会は警告または50万円以下の違約金を課すことができ、警告に従わない場合は500万円以下の違約金などの措置があります(規約 第27条)。出典は不動産公正取引協議会連合会の規約集(2025年8月26日版)です。本記事は法的な助言ではありません。具体的な表現は、社内の広告審査や所属する地区の公正取引協議会にご確認ください。
リアルタイムの演出は、規約との相性がよい面があります。 表記を全画面に固定でき、眺望や日照を実際の3Dデータから計算でき、周辺の建物の変化にもデータの更新で対応できるからです。一方で、操作によって表示が変わるぶん、どの画面にも誤認を招く表示が出ないかを、組み合わせごとに確認する必要があります。
7. 開発のフェーズごとの使い方:仮囲いから完売後まで
映像演出はギャラリーの中だけのものではありません。販売のフェーズごとに、役割が変わります。
| フェーズ | 使い方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 着工〜販売前 | 仮囲いや現地での投影、街の人に向けた開発のストーリー | 表示規約第5条により、建築確認などの前は物件の内容を表示できない。屋外での投影は、自治体の屋外広告物の扱いも確認する |
| 販売期間(ギャラリー) | 模型、シアター、LED、XR、インタラクティブ模型 | 販売期間は数年に及ぶことがあり、設計変更や価格表の更新に対応できる作りにする |
| 竣工・内覧会・入居 | 建物そのものへの投影、入居者向けのイベント | 実物を見られる段階では、映像は「体験の演出」に役割を移す |
| 完売後 | 集約型ギャラリーで次の物件へ、または入居者ラウンジなどへの転用 | 模型と3Dデータを差し替えて使える作りにしておくと、次の物件で仕組みを再利用できる |
建物や広場への屋外の投影については、北御堂の制作事例で、会場の3Dモデル化から現地での調整までを詳しく紹介しています。
8. 模型会社・内装会社と共有すべき技術的な条件
映像は、模型と部屋が決まった後に足すと、うまくいきません。模型の設計と内装の段階から、次の条件を共有してください。
| 項目 | 確認すること |
|---|---|
| 模型の仕上げ | 投影する面は、白くマットな仕上げが基本です。光沢や濃い色の面には映像がきれいに乗りません。照明を仕込む窓や、投影しない部分を最初に決めます |
| 模型の3Dデータ | 模型を作ったCADや3Dデータを、映像の制作側に渡せるようにします。投影の位置合わせと、リアルタイムの計算の土台になります |
| 天井と投影の位置 | 天井高、梁、空調の位置で、プロジェクターの台数と配置が決まります。来場者が模型をのぞき込むと影ができるため、複数の方向から投影します |
| 見る距離 | 来場者は模型の縁から数十cmの距離で見ます。建物や道の細部が、その距離で読める解像度が必要です |
| 照明 | 投影の時間は照明を落とす演出にするか、明るいままでも見える構成にするかを決めます。部屋の照明を映像と連動させると、切り替えが自然になります |
| 運用期間 | 販売期間が数年に及ぶ場合は、機材の連続運転、交換部品、保守の体制を決めておきます |
| 更新 | 設計変更、価格表、販売済みの住戸の表示など、更新する情報と、誰が更新するかを決めます |
プロジェクターの選び方と費用の内訳は、プロジェクションマッピングの費用ガイドで整理しています。プロジェクションマッピングとインタラクティブなインスタレーションの違いは、インタラクティブ・インスタレーションとプロジェクションマッピングの比較をご覧ください。
9. 効果をどう測るか
映像演出が成約率をどれだけ上げたかを公表した事例は、国内外ともに見つかりませんでした。導入事例の多くは、来場者の感想や、導入の意図の説明にとどまっています。だからこそ、導入の前に、何で効果を判断するかを決めておくことをおすすめします。
| 段階 | 指標の例 | 取り方 |
|---|---|---|
| 来場前 | 来場予約の数、予約時に見たい内容 | 予約フォーム |
| ギャラリー内 | 模型や映像の前にいた時間、選ばれた住戸・季節・施設 | インタラクティブ模型の操作ログ、接客記録 |
| 商談 | 検討住戸の絞り込みまでの来場回数 | 営業の記録 |
| 成果 | 再来場率、申込、契約 | 販売管理 |
上映型の演出では、ギャラリー内の行動はほとんど記録できません。インタラクティブな模型なら、どの住戸の眺望や日当たりが何度確かめられたかが分かり、販売の現場で使える情報になります。
10. よくある失敗
- 誰も操作できない映像を作る。 上映が終わると、来場者は自分の住戸のことを営業担当に聞き直すことになります。上映の後に、自分で確かめられる時間をつくりましょう。
- 映像を設計に固定してしまう。 書き出した映像は、設計変更のたびに作り直しが必要です。販売期間を見越して、更新しやすい作りにしましょう。
- 眺望や日照を良く見せすぎる。 表示規約の不当表示にあたるおそれがあります。実際の階と方角のデータから見せましょう。
- 模型を作った後に映像を考える。 光沢のある仕上げや、投影の邪魔になる照明は、後から直せません。
- ひとつの手法ですべてを伝えようとする。 眺望、立地、広さ、共用部は、それぞれ向いている手法が違います。
11. 進め方:6つのステップ
- 伝えたいことを決める。 1章の5つの役割のうち、この物件で最も伝わりにくいものを2〜3つ選びます。
- 空間と模型の条件をそろえる。 部屋の寸法、天井高、模型の縮尺と仕上げを、模型会社・内装会社と同じ段階で共有します。
- 3Dデータを準備する。 建物のCAD・BIMデータ、模型のデータ、周辺の3D都市モデルなどをそろえます。
- 3Dで計測し、プレビューする。 ギャラリーの部屋と模型を3Dで計測し、その3Dデータの上で、設置の前に見え方と操作を確かめます。
- 現地で調整する。 投影の位置合わせ、明るさ、操作の流れを、実際の接客の動きに合わせて調整します。
- 運用し、更新し、測る。 販売期間中の更新の体制と、9章の指標を決め、定期的に見直します。
12. Utsuboについて
Utsubo株式会社は、2021年に設立した大阪市中央区のクリエイティブスタジオです。リアルタイム3Dの技術で、インタラクティブなインスタレーション、プロジェクションマッピング、Web体験を制作しています。社内メンバーと協力スタッフのチームで、全国・海外の案件に、日本語・英語・フランス語で対応しています。
主な実績:
- JR西日本: 本社ビルのリニューアルにあわせ、1階に設置したデジタルインスタレーション(2025年2月)。社員から集めたメッセージを、リアルタイムで3Dの建物に変え、ひとつの都市として可視化しています。
- 中小機構(大阪・関西万博): インタラクティブインスタレーション「未来航路」(2025年10月)。全国から集まった1,800件のメッセージを3面の投影スクリーンでアニメーションにし、iPadを使ってその場で演出しました。
- 大阪・関西万博「Waves of Connection」: Utsuboのオリジナル作品で、7日間で1万人以上の方にご体験いただきました。
- 北御堂(御堂筋イルミネーション2026): 来場者の動きに反応するプロジェクションマッピングのコンテンツとソフトウェア(制作事例)。
プロジェクションマッピングの制作体制はプロジェクションマッピング制作、来場者が参加できる展示はインタラクティブコンテンツ制作でご紹介しています。
販売代理会社・広告代理店・模型会社の方へ
Utsuboは、ギャラリー全体を企画するチームと組み、映像コンテンツ、インタラクティブな仕組み、リアルタイムのソフトウェアを担当します。模型、内装、機材の施工は、各社と連携して進めます。企画段階での技術的なご相談や、既存の計画への部分的な参加にも対応し、クレジットの扱いは契約で定めます。協業の進め方は、代理店・イベント制作会社のための技術パートナー活用ガイドをご覧ください。
13. ご相談ください
ギャラリーの映像演出をご検討中でしたら、ページ下部のフォームから次の4点をお知らせください。
- 物件の規模と、ギャラリーの形(物件専用か、集約型か)
- 最も伝わりにくいと感じていること(眺望、立地、広さ、共用部など)
- 模型の有無と縮尺、部屋の寸法
- ギャラリーのオープン時期と、販売期間の見込み
概算レンジ、実現性についてのコメント、既存の事例映像をお返しします。
ご自身のギャラリーでのプレビュー(14万円・税別): 稟議の前に、実際の部屋で見え方を確かめたい場合は、ギャラリーの部屋を3Dで計測し、その3Dデータの上でプレビューをつくります。大阪・京都・神戸・東京のギャラリーは14万円(税別)で、次の内容を含みます。
- 対象: ギャラリーの1室と、その模型(模型の形は、模型会社のCADデータを使います。ない場合は現地で計測します)
- 現地作業: 半日(LiDARとガウシアンスプラッティングによる計測)
- 演出: 模型へのサンプル演出1シーン(例:1つの住戸を光らせ、2〜3の時刻の日の当たり方と影を見せる)
- 成果物: 実際のプロジェクターの位置と明るさを反映した、2〜3視点のプレビュー映像
- プロジェクターの配置: 概略案(本制作で確定します)
- 修正と打ち合わせ: 修正1回、確認のお打ち合わせ1回
床や壁のインタラクティブな演出のプレビューは、内容に合わせて個別にお見積もりします。部屋や模型がまだない段階では、図面やCADデータをもとに、同じ価格でプレビューをつくります。上記以外の地域のギャラリーは、図面・写真・CADデータをもとにしたプレビュー(現地での計測なし)を同じ価格でお受けするか、現地での計測を移動費の実費を加えてお受けします。本制作をご依頼いただいた場合、プレビューの費用は全額を制作費に充当します。
フォームから相談する / 30分のプロジェクト相談を予約する
チェックリスト
- この物件で最も伝わりにくいことを2〜3つに絞った
- それぞれに向いた手法(模型投影、シアター、LED、XR、インタラクティブ模型など)を選んだ
- 模型の仕上げ、3Dデータ、天井と投影の位置を、模型会社・内装会社と共有した
- 「CG」「完成予想図」の表記を、すべての画面に入れる方法を決めた
- 眺望と日照は、実際の階・方角・周辺建物のデータから見せる
- 仮囲いやティザー映像は、建築確認などの処分の後に物件の内容を出す
- 設計変更、価格表、販売済み住戸の更新の方法と担当を決めた
- 来場予約から契約までの指標と、ギャラリー内の記録の取り方を決めた
- 導入の前に、部屋と模型を3Dで計測したプレビューで見え方を確かめた
- ファミリー向けの物件では、商談席から見える位置に、子どもが遊べる体験を検討した
- 完売後に、仕組みを次の物件や別の用途で使う計画がある
まとめ
マンションギャラリーの映像演出は、まだない建物の眺望、立地、広さ、共用部、価値を伝えるための仕組みで、伝えたいことごとに向いた手法があります。国内の事例は上映型のシアターが中心ですが、高額な住戸を1組ずつ説明する販売では、来場者が自分の住戸を選び、その場で答えが返ってくるインタラクティブな模型が力を発揮します。子ども連れのご家族には、子どもが夢中になれる床や壁の体験が、親が落ち着いて話せる時間をつくります。表示規約は映像にも適用されるため、表記と眺望・日照の見せ方は、企画の最初から決めておきましょう。効果の数値を公表した事例はまだないからこそ、導入の前に測り方を決めることが大切です。そして設置の前に、ギャラリーの部屋と模型を3Dで計測したプレビューで、見え方を確かめておきましょう。
よくある質問
模型へのプロジェクションマッピングとLEDは、どちらがよいですか? 伝えたいことで選びます。立地、周辺環境、建物の全体像を見せるなら模型へのプロジェクションマッピング、等身大の間取りや眺望、共用部を見せるならLED空間が向いています。模型への投影は照明を落とせる部屋が必要で、LEDは明るい部屋でも使えます。多くのギャラリーは、部屋やゾーンを分けて両方を使っています。
来場者が操作できる模型にするには、何が必要ですか? 建物と模型の3Dデータ、模型の上で映像をその場で計算するリアルタイムのソフトウェア、操作用のタブレットなどの端末、そして投影の位置合わせです。模型の設計の段階から、投影する面の仕上げとデータの受け渡しを決めておくと、スムーズに進みます。
設計変更があったら、映像は作り直しですか? 書き出した映像は、作り直しが必要です。建物の3Dデータの上で映像を計算するリアルタイムの仕組みなら、3Dデータを更新すれば映像が追従します。集約型のギャラリーで次の物件に替わるときも、模型と3Dデータの差し替えで仕組みを使い続けられます。
導入の前に、自分たちのギャラリーでの見え方を確かめられますか? 確かめられます。ギャラリーの部屋を3Dで計測し、模型のCADデータとあわせて、模型へのサンプル演出1シーンを、実際のプロジェクターの位置と明るさを反映した2〜3視点のプレビュー映像でお見せします。費用は14万円(税別)で、大阪・京都・神戸・東京のギャラリーは現地での計測を含みます。部屋や模型がまだない段階では、図面やCADデータからつくります。それ以外の地域のギャラリーは、図面やCADデータからつくるか、移動費の実費を加えて現地で計測します。床や壁のインタラクティブな演出のプレビューは、個別にお見積もりします。本制作をご依頼いただいた場合は、全額を制作費に充当します。
表示規約は、ギャラリーの映像にも適用されますか? 適用されます。表示規約は「映写、演劇又は電光による広告」と「モデル・ルーム」による表示を、規約の対象となる表示に含めています(第4条第5項)。CGや完成予想図はその旨を明示し(施行規則第9条第23号)、眺望や日照を実際より良く見せる表示は禁止されています(第23条第1項第38号・第43号)。具体的な表現は、所属する地区の公正取引協議会にご確認ください。
仮囲いに映像を投影してもよいですか? 工事の完了前は、建築確認などの処分の後でなければ、物件の内容や取引条件の広告表示ができません(表示規約第5条)。処分の前は、物件の内容に触れない街や開発のストーリーにとどめます。屋外での投影は、自治体の屋外広告物の扱いもあわせて確認してください。
効果はどう測ればよいですか? 来場予約、ギャラリー内の滞在時間、選ばれた住戸や季節、再来場、申込・契約の段階ごとに指標を決めます。インタラクティブな模型なら、どの住戸の眺望や日当たりが確かめられたかが操作ログに残ります。成約率への効果を公表した事例は見つからないため、導入の前に測り方を決めておくことが大切です。
費用はどのくらいですか? 模型の大きさ、プロジェクターやLEDの規模、インタラクティブにするかどうか、運用期間で大きく変わります。機材・設営・制作の内訳はプロジェクションマッピングの費用ガイドで整理しています。物件の規模と模型の縮尺、部屋の寸法をお知らせいただければ、概算レンジをお返しします。
出典
- 不動産経済研究所「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2026年度上半期」(2026年10月20日):PDF
- 不動産経済研究所「近畿圏 新築分譲マンション市場動向 2026年度上半期」(2026年10月20日):PDF
- 不動産公正取引協議会連合会「不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則」(規約集、2025年8月26日):公正競争規約のページ
- マンションプラス(長谷工グループ)「マンション販売の常識が変わる? 最新デジタルマンションギャラリーの全貌」(2026年4月22日):記事
- 各事例の出典は、3章の表の下に記載しています。

プロジェクションマッピング・映像演出の制作


